障害者雇用に勤めていて『辞めたい』と思ったきっかけがある
こんにちは。フリーライターの林谷です。
発達障害の一つASD(自閉症スペクトラム)を持つ当事者になります(僕が持つ発達障害に関してはこちら)。
今日は発達障害を持つ人にも関わる『障害者雇用』についての話です(僕がどんな経歴を歩んできたか知りたいときは、こちらの記事を参考としてください)。
僕はおよそ4年間民間企業の障害者雇用として、事務の仕事をしました。具体的な仕事内容は内部書類のチェックや、社員給与の請求補助といった感じです。では、どんな状況であって、どうして辞めるに至ったのか。順を追って説明していきましょう。
障害者雇用で勤務中、長期休暇や大きな体調悪化はなかった
障害者雇用で離職する人の多くは、体調不良というデータも出ています。発達障害を持つ人の場合、入社して1年以内に3割近くの方が離職してしまうという事態もあるのです。
しかし、僕が辞めた原因は『体調不良』ではありません。2日間くらい休むような不調はありましたが、1週間単位休みが必要な不調はありませんでした。業務も安定していて、一日の仕事の流れもできていました。
ですから辞めたいと思った原因は、他のところにあります。では、その辞めたいと思ったきっかけとなったポイントを3つお伝えしていきましょう。
【体験談】障害者雇用を『辞めたい』と感じたポイント
きっかけポイント1:『得意を活かすこと』よりも『苦手克服』の方が遥かに評価が高い
1つ目のきっかけは
『「得意を活かすこと」よりも「苦手克服」の方が遥かに評価が高い』
ことです。
結局これって、『頑張って、障害を持たない人のようになれ』ってことですよね。その時点で僕らしさを受け入れてくれていないのです。どんなにメリットがあっても。
この話は過去にもしてきたことではありますが、自分が得意な『処理の早さ、細かさ』などを活かしてこれまでになしえなかった結果を出しました。それでも周囲からは、不満に思われるだけでした。『偉そうにしやがって』という評価しか僕は感じませんでした。これまで半年以上も遅れていた書類の流れを、2年かかって正規に戻して請求までの流れをスムーズにできても、です。
なぜそうなのか。障害特性上電話が取れず、他の方にお願いしていたためです。ですからどんなに頑張っても『電話が取れないくせに』がへばりついていました。最終的には電話応対のカバーがしきれなくなって、僕にも電話を取るように指示が来ました。
できなくはないんです。最低限の取次くらいならできました。ただ、それを『待つ姿勢』にとんでもない体力・精神力を消費するのです。ここを理解してもらえませんでした。これはASDの『どんなことが来るか分からないことに対しての耐性が弱い』ということが関わってきます。
それでも、なんとか電話を取りました。するとこれまで懸命に結果を残してきたよりも、周囲は喜んでいるではないですか!?『よく頑張ってるね(パチパチ…)』って。
結局、彼らが求めていたものは『(向こうが思う)普通レベルになること』だったと感じました。発達障害の凹凸を活かして自分らしく働くのではなくて、苦手克服して平均的な人間になることを求められていた。というわけです。
『頑張る僕は罪なのか。僕が(僕らしく)頑張ることをみんなは歓迎していない。』そう感じた時に『辞めたい』と感じるようになりました。
きっかけポイント2:障害者雇用への見解、方針に統一性がない
2つ目は
『障害者雇用への見解、方針に統一性がない』
ことです。
分かりやすく言うと『戦力として活かしたいのか』『邪魔にならない人になるように育てるのか』この2つの思想が社内でせめぎ合っていたのです。こうなると先ほどの『評価』にも関わってきますが、振り回されるわけです。
突然意味の分からないトライをさせられたり、全員電話が取れるようにトライさせられたり、そのたび振り回されました。慣れてきたと思ったらああでもない、こうでもないと反対側の考えの陣営から不満を垂れられたわけです。
結局、どうやって僕たちを扱えばいいか分からないまま雇っているようでした。事実、『障害者雇用にどんな仕事をさせたらよいか分からない』と悩んでいる会社は多いようです。こんな不安定な方針の中働いていては、いつか体調を崩すかもしれない。そう思ったことも『辞めたい』と思うきっかけになったことの一つになります。
きっかけポイント3:『障害者の割には』の"置物枠"を超えられない
3つ目は
『「障害者の割には」の"置物枠"を超えられない』
ことです。
どんなに頑張って、どんなに障害を持たない方以上の成果を出しても、相応の評価はされませんでした。反対に扱い方が分からない感じを出されていたくらいです。
僕自身『障害者枠は、“置物枠”じゃない』ということをずっと訴えかけてきました。すべてができないわけではないけれど、企業にとってメリットになることもやれるんだ、と。そうして自分の業務を全うして結果を出し、最終的には他部署に教えるレベルまで行くこともできました。そうして『得意部分』で頑張ろうとすると、『そんなことをしているなら電話応対でもやればいいじゃない』とばりに僕の努力を邪魔しようとしてきました。
周囲には『できないことがありながら、得意を徹底的に伸ばす』という考えがなかったのです。こうして電話対応に費やす分、努力ができなくなります。それも時間をうまく効率化させてさらに努力しようとすると、また良く分からない難癖をつけられる…これの繰り返しです。どう頑張っても周りは僕に『障害者の割には』という評価にさせたいように感じました。
彼らにとって、障害者が(一般的に言う)健常者を超えることがあってはならない。そんなプライドを懸命に守っているようでした。
障害者であっても、学ぶことがあるのなら僕は頼ってもいいと思うし、得るものはあると思っています。これは今でも同じです。助け合う形が少し違うだけなのに、一方的に受け取る側=置物から卒業できないのであれば、辞めるしかないなと思ったのが正直なところです。
障害者雇用・発達障害の働き方について考えること
障害者『でも』でなく、障害者『だから』できる仕事を見極めていく
これは企業にもお願いしたいことではありますが、自分自身も企業にとって明確な『価値』がわかるようなスキル、人間性を出していく必要があるのではと考えています。
この勤めてきた企業でもそうですが、あくまでも障害者雇用には『障害者“でも”できる仕事を任せておけばいい』という考え方でした。これではどう頑張っても置物になる可能性は高いです。ベースとしてみている評価が低いわけですから。
自分には何ができて、何ができないのか。そのできないことがあってもなお周囲からニーズがあるような人間になるためにどうすればいいのか。今僕は、そんなことを考えています。
あくまでも『障害者“だから”こそできる仕事』をしたい。その『価値』に近づけられるのではないかと考えているものの一つが、このブログであったりします。障害者アーティストなども同様です(僕の登録しているパラリンアートのページはこちら、取材記事はこちら)。
同じ障害者雇用や発達障害の当事者に伝えたいこと
自分の価値を自分から下げないでほしい
障害者雇用で頑張っている方や、発達障害を持つ人で社会に何とか貢献しようと頑張っている方、多いと思います。そのような方に伝えたいことは『自分の価値を自分から下げないでほしい』ことです。
やっぱり僕もそうでしたが、苦手なことばかりに直面していると、どうしても周囲の評価も低めになりがちです。僕も『あら、頑張ったのね』なんて子供を相手にしているような感じで言われて腹が立ったこともありました。そうした状態を続けていると『自分は周りより出来の悪い人間なのではないか』と思ってしまうきっかけもたくさん転がっているんです。
でも、それでも、自分の価値を自分から下げることはありません。出来が悪いこともありません。もし自分自身やりがいや『ここに自分がいて意味があるのかな』と感じたら、『自分だからこそできる仕事』を見つめ直してみてください。
『自分でもできる仕事』ではないです。あなただからこそできる仕事をもう一度考え直してみてください。
今の職場で見つかったのであれば、上司に『その仕事を行うメリット』と『自分が考えた業務の流れ』を提案して話し合ってみましょう。もし考えた末に『ここでできることはないな』と感じたら、転職エージェントなどに登録して、まずはいろんな仕事を見てみてください。
そうしてもっと自分の『使い方』や『ステージ(環境)』にこだわってほしいと思います。僕もそうして、今ライティングを仕事にしようと取り組み続けている最中です。
もう一度だけ言います。『あなた“だから”できる仕事』です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は書いていて悔しさもあって『熱』が入ってしまいました。
障害者はただ働ければいい。お金をもらえればいい。僕はこの職場で、そんなふうに考えている周囲の方に直面してきました。どうして障害者が『やりがい』を求めてはいけないのか。できないことがある人は、それだけで活躍する機会がゼロなのか。憤りがありました。
ただ僕は、諦めていません。周囲にあっと言わせるまで自分にしかできないことを取り組み続けたいと思います。
障害者雇用の方、発達障害を持つ当事者の方、『置物』ではないよ。
今日は少なくとも、この一言だけでも覚えてもらえれば、僕は嬉しいです。
コメント
コメントありがとうございます。
心理検査の結果だけ…ということですよね。上司には『言語理解が…』『知覚統合が…』という感じで伝わっているということでしょうか。伝えた後、上司がどんな反応をしたのかが少し心配です(上司には、最終的な対応が見えていない可能性があると思いました)。
周りからの扱いは、僕も良く分かります。経験もしました。
ペットみたいに扱ってくるんですよね。フォローを求める立場であるゆえ、
そうした存在と周りが誤解してしまう。
『おれは置物じゃねえ!』
と心の中で良く叫んでいました。あれホントムカつきます。
叫ぶだけでは伝わらないので、結果を出しました。
それでもその職場では、『ペット』から抜けきれませんでした。
周りからは『世話をするべき存在』でいてほしいのか、と思えるくらいでした。
でも職場側も、どう接したらよいか迷っているようです。
障害者雇用は、原則入社前の応募書類や、採用面接などで自分の悩みやすいことやお願いしたいこと、活かせる部分などを伝えるチャンスが比較的多いでしょう。
もしこれから就職を考えていて、
クローズか障害者枠かで悩んでいる場合は、
上記の部分を踏まえて検討してみても良いかもしれません。
自分一人で決めることが不安な場合は、
就労移行支援事業所などを利用して、専門機関の力をお借りすることも良いと思います。