【ASD】相手の気持ちに寄り添う為に行った『仮説立て』法を紹介

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ASD特性で悩みながら、相手の気持ちへの寄り添い方を考えた

子供時代『相手の気持ちが分からない』ことで苦労した

こんにちは。フリーライターの林谷です。
今日のテーマは『ASD(自閉症スペクトラム)と相手の気持ち』です。

僕は31歳の時に発達障害の一つ、ASDの診断を受けました。ただしそれまで全く自覚がなかったかと言うと、そうではありません。むしろ違和感は、人と関わり始めた幼稚園の頃からずっと感じてきたことでした。常に相手の意図と異なる行動をしてしまい、周囲に迷惑をかけることが多くあったのです。

特に意識しているわけでもないのに的外れな言動をしていたり、何か浮いてしまっていたり、それで周囲からいじめられたり…そんなことが幼稚園から中学まで続いていました。ずっと継続的ではなかったものの、いじめを11年連続で受けてきたわけです。嫌でも『自分は何か変』くらいは気づきました。

人とは違う『罪悪感』から逃れたくて、対処法を考えた

今だからこそその『変』を受け入れられるようになりましたが、当時は『これだけ継続して、色々な人に嫌われているのだから、自分は罪な人間なんだ』と自分を呪い続けました。これ自体は良いことではありませんが、この『罪悪感』から早く脱したいために『いかに相手の気持ちに寄り添った行動をするか』ということをものすごく考えてきました。

そうして行ったことが今回のタイトル『仮説立て』の方法でした。ではどんなことをしたのか説明していきましょう。


ASDを持つ僕が相手の気持ちに寄り添うために行った『仮説立て』の方法

ポイント1:言葉ではない表現に直面した時が、トライするタイミング

1つ目のポイントは、言葉ではない表現に直面したタイミングで行うことです。何も言わないけれど何か言いたそうな表情をしている時、言葉を発していたけれど『本当にそうか?』と思った時、そんな時を仮説を立てるタイミングとして行いました。

ポイント2:相手がいまどう思っているか、複数『仮説』を立ててみる

2つ目のポイントは『仮説立て』の方法について。ポイント1のタイミングで相手について、複数の仮説を立ててみます。できるだけ多く、いろんなパターンの仮説を立てることをお勧めします。分かりやすく例を挙げて紹介していきましょう。

【現在見えること】
職場の同僚が、下を向いて元気がなさそうだ

【仮説】
A、体調が悪いのかな…

B.仕事で何か悩んでいるのかな…

C.お腹が空いているのかな…

D.お昼過ぎだし、眠いのかな…

E.もしかしたら、仕事の計画を考えているのかな…

F.たまたま下を向いていただけかな…

G.今は思考停止している?

僕が上の状況で想像するとして、パッと浮かんだ仮説がこの7パターンです。

意外とC、Dあたりもケースとしては結構あって、心配して声をかけると『相変わらずの“考えすぎ”だな』なんて言われることもありました。ただ、沢山の候補を考えるほど、それだけ相手に労力を要しているわけで、相手に寄り添うことにつながるのではと思って今でも実践しています。ただしこの考えた候補を全て相手に話すことはタブーです。あくまでも想像して、自分で行動を選択する事が重要です。

ポイント3:立てた仮説に基づいて、行動案を作ってみる

3つ目のポイントは、ポイント2で立てた仮説に基づいて、行動案を作ってみることです。上の7種類の仮説に基づいて、どう行動すればいいか案を練ってみましょう。

仮説A.体調が悪いのかな…
→行動A.『体大丈夫?具合が悪いの?』と聞いてみる

仮説B.仕事で何か悩んでいるのかな…
→行動B.『何かありましたか?』『何か僕にお手伝いできることはありますか?』など聞いてみる

仮説C.お腹が空いているのかな…
仮説D.お昼過ぎだし、眠いのかな…
仮説E.もしかしたら、仕事の計画を考えているのかな…
仮説F.たまたま下を向いていただけかな…
→行動C・D・E・F、しばらく様子を見る

仮説G.今は思考停止している?
→行動G.5分後にもう一度見て、変化があれば声をかけてみよう。なければそのままにしておく

こんな感じです。仮説CDEFは『様子を見る』にしてありますが、様子を見たうえでさらにもう一段階『相手がこう動いたら、自分はこうしてみる』のように行動を加えてみることもしていました。

ポイント4:候補のうち、一番適切だと思った行動をとる

4つ目のポイントは、ポイント3で決めた候補のうち、『これかも』と思った行動があれば実践します。上の通り『様子を見る』も行動の一つです。注意してほしいのは、ここで基準や正解を考えすぎないこと。純粋に相手のためになる最善の方法を考えたうえでトライしてみるように心がけていました。

ポイント5:得た結果を受け入れる

最後のポイントは、得た結果を受け入れることです。後ほど説明しますが、100%正解する行動はありません。一番確実なのは、こうして行動を続けていって相手の傾向を知ることです。

ですからどんな行動をして喜んでもらったか、どんな行動をして『?』な顔をされたか、どんな行動をして不満を持たれてしまったのか、一人ひとりその時によって異なる心情に対し、向き合っていくしかないと僕は思っています。

遠回りなやり方ではありますが、これを繰り返すことで、良いのか悪いのか僕は「相手の気持ちが分からない」人から『世話を焼き過ぎ』『考えすぎ』と呼ばれる人間になっていました。それがいいのかどうかは分かりませんが、『空気が読めない』『相手の気持ちが分からない』ことで悩む回数は少なくなったことは事実です。

【ASD】『相手の気持ちが分からない』ことで悩んでいる人へ

100%確かな正解を待っていると出遅れることがある

もちろん、物事を判断するうえで慎重に決めることはとても大切なことです。しかし、自分の気持ちを外に出すことができないケースは、ASDを持つ人以外にもあることなのです。むしろ、思ったことを全部言葉にして言ってくれるような人は…まずいません。それだけ正解を言う=具体的な形にして伝えるということは、誰にとっても難しいことなのです。

『相手に寄り添う』のが苦手な人って、『正解以外の行動しかしてはいけない』という固定観念に縛られて結果出遅れてしまう、という人が多いように感じます。正解が分かる=明確になるまでは動かない。こうしていると、本来行動しないといけない場面で出遅れてしまうことにもつながります。

相手の気持ちを『当てる』のではなく『考える』『想像してみる』よう意識する

僕も『思いやりの空振りをしたくない』ために、つい相手の出方を待ってしまうことがあります。その結果『後出しじゃんけん』的な“ずるい接し方”になってしまうことが多々あったのです。

人の気持ちを『当てる』ことはできません。でも分からないからと言って、答えが分かるまで考えなくていいとはならないと思います。少ない情報からどれだけ多く相手のことを想像できるか。正解か不正解かは別として、それが『寄り添う』だと僕は思っているのです。

おわりに

こちらの記事で、『空気が読めない』問題について『分からない時は慎重に判断する』旨をお伝えしています。ただこれはあくまでも緊急時の方法です。常に慎重に行っているようでは、大事な場面で出遅れてしまうこともあるかもしれません。

相手の気持ちの正解は何か、そこに固執することは実はそんなに重要なことではないと思います。なぜなら本当に苦しんでいる場合は、本人でも正解が分からないほど混乱していることもあるからです。それに逆の立場で、あなたはただ『眠かっただけ』で下を向いていたとしても、『大丈夫?』と声をかけられて、少なくとも不快にはならないでしょう。

相手の気持ちについて1個の正解を当てるのではなくて、沢山の答えを考える。僕は『寄り添う』をそう解釈して日々向き合っています。


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