ASD(自閉症スペクトラム)とHSP。両方持つ僕のメリット・デメリット

発達障害&HSPアイコン

ASDとHSP両方の当事者です

こんにちは。フリーライターの林谷です。

今回は僕も当事者である、「発達障害」のひとつ「ASD(自閉症スペクトラム)」と、繊細な気質が強い特徴を持つ「HSP」この両方を持っている僕がどんなメリット、デメリットを感じているかをお話ししたいと思います。

【おさらい】ASDとHSPの特徴

まず本題の前に、それぞれの障害や気質にどんな特徴があるのか、簡単におさらいしていきますね。

ASD(自閉症スペクトラム)の特徴

ASD(自閉症スペクトラム)は、発達障害のうちの1つに該当する障害です。かつては「アスペルガー症候群」や「自閉症」など呼ばれていました。これらの障害が統合され「ASD」と解釈されるようになっています。

主に現れやすい特徴として

◆『空気を読む』など、表面化されていないことに対して判断、行動することが苦手

◆感情表現をする、理解することが苦手

◆相手の気持ちに共感することが苦手(これも表面化されていないことであるため)

◆見通しのない物事や、明確でない物事に対しての耐性が低め

◆特定の物事へのこだわりが強い


など、これらの特徴によって、他者とのコミュニケーションに苦労しやすいことがあります。

上では良くないところばかり挙げましたが、集中力の高さ記憶力の良さなどもあります。自己理解を深めれば活かせるチャンスがあることも、併せて覚えておいてください。
参考:ASD(自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)
参考:こだわり、不安がつよい:困りごとのトリセツ(取扱説明書)|発達障害プロジェクト

HSPの特徴

次にHSPについての紹介です。常にお伝えして来ていることなのですが、まずお伝えしておきたいととしてHSPは、障害や疾患ではありません。

あくまで、「人間の気質の特徴」を指す心理学用語である。これだけは覚えておいてください(詳しくはこちらの記事もご覧ください)。

HSPは5人に1人の割合でいるとされ、特徴として

◆感受性が強い

◆共感性が高い

◆情報処理の量が多い


などの特徴があります。

障害ではありませんが、その気質により社会で生きづらさを感じることもあります。『思慮深さ』として良い一面がある一方で、考えすぎてしまって精神疾患になるリスクが高い…など、疲労と隣り合わせになりやすい辛い一面があることが多いです。
参考:HSPとは | HSP診断テスト
参考: HSPの苦手なこと | HSP診断テスト


ASDとHSPを両方持っている

ASDは心理検査で、HSPは診断テストで判明している

さて、僕はこのASDと、HSPの両方を持つ人間です。ASDは31歳の時に心理検査を行い、医師・臨床心理士の方から診断を受けました。HSPは35歳くらいの時にこのASDの特徴には当てはまらない部分があったため、偶然見つけたテストを受けて知ったものです(詳しくはこちらをご覧ください)。

HSPは障害とは異なるため医師の診断はなく、診断テストにより判定するものです。テストを受けた結果僕は「非常に強い」と判定されました。


両方持っていることでのメリットとデメリットがある

では、この特徴を両方持っているとハイブリッド?2倍苦しい?どっちだと思いますか?
答えは「両方」です。

併せ持つことで一方の弱みをカバーしてくれているところ』、『特性の良さを活かしやすくなるところもあります。その反面余計に苦しみやすいところ』、『一方の弱みによって、クリアしにくくなるところこれも出てきています。

では具体的にASDHSPを両方持っていることでのメリットデメリットをお伝えしていきますね。
参考:CiNii 論文 - Highly Sensitive Person Scale日本版(HSPS-J19)の作成
参考: 日本心理学会第81回大会

【体験談】ASDとHSPを両方持つ僕のデメリット

①『嫌な雰囲気は感じるのに、その正体が分からない』

例えばASDのみを持っていたら、空気が読めないことでスルーできた部分もあったかもしれません(もちろん、個人の性格や置かれた環境でも変化します)。しかし、HSPも持つことでその『悩みの元』を多く拾ってきてしまうんです。

ASDの特徴で曖昧なものや、はっきりしないものの処理が苦手なのに、HSPの情報収集の多さでどんどん不安材料を吸収していってしまう。そのため、周囲から見ると勝手に悩みの元を探してきて勝手に苦しんでいる。そのように他者から映る時もあったようです。

昔中学時代の部活の副顧問の先生が、うちの弟の担任になって家庭訪問に来ました。そのとき先生はなぜか兄である、僕のことについて話したのです。先生から『兄は、世の中を深く考えすぎる』と言われた、とあとで親から聞きました。

確かに理科の授業で学んだ、環境問題について悩みすぎて不眠症になる中学生でした。ですからそう見えるのも否めませんが。

このように、嫌なものを多くキャッチする特性があるのに、スルーできず正体をつかめない状態を作りやすいことで精神的不調になることも多くありました。

②あれこれ考えすぎて、自分から雑談を持ちかけることが苦手

ASDを持っていると、自分から積極的に話しかけるのがあまり得意ではありません。
中には『空気が読めない』ことを逆に生かして積極的な方もいますが、僕自身はうまく話せないタイプでした。

中でも特に、『雑談』が苦手なんです。これは何を話したらよいか最初から話すべきことが決まっていない、『答えが明確でない』ケースであるからです。

これだけでも話しかけるのが苦手になりやすいのに、これにHSPの特徴も重なるためにさらに苦労しました。

その部分は、話した後の背景をあれこれ考えてしまうことです。
『これを言ったら相手はどんな反応をするだろうか』
『この言葉は使わず、こっちの表現の方が適切かどうか…』など、
深く考えすぎてしまうんです。その中で最適な言葉をものすごく探すんですけど、そういうのって大概相手には『重い』と感じられるようでした。

そんななのでよく友達に『何を話せばよいか分からない』と相談すると、『何でもいい』や『昨日あれ食べたとか適当なことを言えばいい』そんな言葉で返されました。僕はその「適当」という曖昧な基準が分からず、「何を話すべきなのか」とさらに悩んでしまうんです。

今はこうして自分を発信することで少しずつ話せるようになってきましたが、今でも雑談は、苦手です。

ちなみに余談ですが、「答えがない」雑談が苦手な反面、テーマや答えがハッキリしている相談を受けた時の対応や意見を発する機会などでは、比較的苦労なく話せると感じています。

③辛い記憶が劣化せず、いつまでも忘れられない

HSPの特徴で「感受性が強い」とお伝えしました。

僕も例にもれずこの影響で、一つ一つ受ける傷の「ダメージのでかさ」が今でもハンパなく大きいです。周りから見ればそこまで落ち込むことないのに…といった感じです。

これに加えて、かつASDの「記憶力が良い」特徴の影響で、いつまでも過去に執着して忘れられない、苦しい思いがフラッシュバックしてくる…なんてことに今でも悩んでます。

その時の痛みまでずっとリアルに思い出すので、本当に辛いです。


ASDとHSPを両方持つ僕のメリット

①多くの情報を吸収し、かつ記憶も得意

HSP気質の『多くの情報を吸収する』特徴と、ASDの『記憶力が良い』特徴。これらが合わさった感じです。この記憶力の正体は、覚える機能というよりは『過去への執着、こだわり』というと分かりやすいでしょう(そのため、デメリットの③のような辛い一面もあります)。

得た情報は、いわば『過去』です。これを多く吸収し、執着することでその中からより良いものを選び出せる…ということにつながりやすいのかなと考えています。

アートもまた、その一つです。てなわけで、僕の作品をちょっとだけお邪魔させてください。
林谷隆志『鎖と彩り』(2020)
林谷隆志『鎖と彩り』(2020)

②誤ったこだわり方になりにくく、適切な物事に集中しやすくなる

ASDのみだとしたら、一つの物事に固執しすぎてしまい間違いだと分かっていても突き進もうとする一面もあるかもしれません。しかしここにHSP気質の『情報が多い』特徴が重なることで、こだわる際には事前に「選択肢」が生まれやすくなっています。

これによって、誤ったこだわりや執着に突き進む可能性が低くなり、適切な物事にこだわり、集中しやすくなっているのでは。そう考えています。さらに言えば、固執する中で周囲の悲しみや困惑した感情もキャッチするのです。そのため「これではいけないのかな」と、歯止めをかけやすい部分も効果としてあると考えています。

③他者や周囲のために純粋に取り組める

この記事でも触れていますが、HSPの気質が強い影響から、他人の悲しみや不幸を目にすることで、それに同調してダメージを負ってしまうと紹介しました。そんな悲しみや感情表現を見たくないために純粋に人のために頑張ることができ、さらには継続することもできるのかな、と感じています。

自分の苦しみから回避するために悲しませないようにするわけですが、その行動が人のためになる、そのために徹底して突き進める。そう思っているんです(もちろん、限度は考えています)。

僕はこれまでによく、周りから「変人だ」「頭がおかしい」と言われてきました。それでも表現や発信をやめなかったのは、この両方の気質があったからだと思います。

おわりに

今回は、僕自身が持つ「ASD」「HSP」この両方持っていることでの様々な影響を紹介してきました。僕の場合はどちらも特徴として公の情報にもなっていることで、双方の特徴を検証しやすいこともあると思います。

しかし、「ASD」か「HSP」のどちらか一方の特徴を持つ方もそうですし、他の障害や特徴を持つ方、さらには障害などの特徴を持っていない方。どんな方にも一つの性格特徴、一つの特性にぴったり当てはまるということ、それはないと思います。

ですからいろいろな特徴を見ていって、それを組み合わせていって、自分だけの「キャラクター(性格や個性の)モデル」を作り出すことができれば、対人関係やスキルを活かす際にも役立って来ると思います。

この記事をきっかけに、「もう一度自分を振り返ってみようかな」そう思う方が一人でもいたら、僕はそれだけでも幸せです。それではまた。

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