【私見】発達障害における、障害者雇用の目的が2分している?

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現場では、『障害者雇用』の目的に対する見解が分かれている

障害者雇用での勤務経験がある

こんにちは、フリーライターの林谷です。
発達障害のひとつ『ASD(自閉症スペクトラム)』を持つ当事者です(関連記事はこちら)。

今日は発達障害を持つ方も関わる、『障害者雇用』についてお話ししたいと思います。

僕は過去3か所の職場を経験しています。そのうちの2か所目の職場が、障害者雇用での事務職でした。この職場は大手企業であり、障害者雇用を多く雇用している会社です。

この職場に僕はおよそ4年、勤務させていただきました。変動の多い中でも4年続けられたのは、上司をはじめ仲間の皆さんのサポートのお陰と思っています。

障害者雇用に対する解釈・価値観の異なることがあった

この職場ですが、障害者雇用の職員が多いゆえか、または大企業であるがゆえかわかりませんが、『障害者雇用に対する目的』への解釈や価値観が相反することがあったのです。それは以下の2つの見解です。

【現場での障害者雇用『2つの見解』】

目標A:弱みをカバーしよう
障害者雇用の苦手な部分をサポートとして、他の人(障害を持たない方)と同じ、もしくは近い形で働いてほしい
→ゆくゆくは苦手なことも克服できればなおよい

目標B:強みで価値を見出そう
障害者だからこそできる良さを活かして、障害を持つ方にしかできない仕事や役割を見出していく
→苦手な部分は必要なところのみ。他の人と同様厳しい条件を求めることもある

もちろん、これは当事者として議論に挟まれていた身として見えていた部分のみですので、真実は分かりません。

しかし少なくとも現場ではこの2つの目的が社内で揺れ動くことで、僕たちが巻き込まれた形になったのは事実です。さらには最近、Twitterでも話題になっているのも見かけたことがあります(ミントさん、ありがとうございます)。


【発達障害当事者】林谷は『障害者雇用の目的』どう思う?

法律上の目的は以下の通りになっている

まず確認しておきたいこととして、障害者雇用の『軸』でもある、法律上の目的はどうなっているのか確認しておきましょう。厚生労働省のホームページ『障害者雇用対策』では、目的について以下のように紹介されています。

障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍することが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指し、障害者雇用対策を進めています。
(中略)
また、障害者本人に対しては、職業訓練や職業紹介、職場適応援助等の職業リハビリテーションを実施し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かな支援がなされるよう配慮しています。
目標A、B。どっちとも取れますよね。活躍することも、支援することも両方記載されているのです。そもそもは、両方をクリアできれば理想ではありますが…


林谷自身はどちらもそれぞれ求めていた時期がある

おいおい、林谷自身はどっちなんだ?』そう思うかもしれません。

はっきり言えば、今は『目標B』です。ガンガン良さを活かして進んでいきたいと思っています…ただこれは心身共に回復し、障害者雇用としてある程度の勤務実績を積めたからだと思ってるんです。

この企業に就職する前や、入社したてのころは『目標B』は望んでいませんでした。やっぱり不安だったし、『失敗したらどうしよう』『怒られたらどうしよう…』という思考が先行していましたから。『成長』なんて言葉は当時は頭の中には全くありませんでした。『戦い』って聞くだけで逃げ出したくなるほど怖かったこともありました。

ですからそうなると、目標Aのように不安を埋めてくれるサポートも大切だと思います。

本人の中では、自分の活かし方に気づくか・気づかないかで求める目的が変わる

僕の感覚ではありますが、『自分はこのスキルで活きることができる』と意識するようになってから『目標B』を求めるようになっていました。これがまだ『自分は何をしたらよいか分からない』『与えられたことを行うだけで手いっぱい』という時期には『目標A』を求めていた感覚があります。

『自分の働く価値』が見えてくるまでは、『作業をこなす』ことにいっぱいなのですが、これをクリアしてくると、『やりがい』を見るようになりました。そうなると『自分の力でもって会社に恩返ししたい』『社会に認められるようなことをしたい』『会社の利益向上に貢献したい』という意識を持つようになっていったのです。

目標Bの意思を示した時に『A側』から不満を持たれたことがある

目標Bは、良さを伸ばすことに重点を置くわけですが、そうなると『弱みの部分は放置なのか』と目標A側の方から不満がられたこともあります。あくまでも、目標Aは、『障害を持たない人と同じ働き方がゴール』という感じでした。ですから相手からすれば『努力せずに遊んでいる』ように見えたのです。

僕のほかにも障害者雇用の方がいました。中には僕のようにやりがいを求めている方もいました。しかし、どうしても『苦手なこと』を突き付けられる…そんなに暇なら電話対応の練習でもしろ、と。頑張るけれど発達障害ならではの『できないことはとことんできない』によって自信を無くしていく…そんな人も見てきました。

『ゴールはみんな同じじゃなきゃいけないのか?』

『障害者“でも”できることじゃなくて、障害者“だから”できることを求めてはいけないのか』

この2つ、常に僕の中で燃えたぎっていました。

【提案】障害者雇用の目的は『こうしたい』案

提案①定期的に目標A、目標Bを選択できるようにする

はじめは自信もなく、サポートを求めやすい『目標A』が適しているかもしれません。しかし、

◆障害の程度

◆本人の成長の度合い

◆本人の意欲

◆役割や具体的な業務目標(社内での価値)が見えている

このような場合は目標Bを設けても良いタイミングかもしれません。ですから年単位で、

○チャレンジコース(目標B)

○サポートコース(目標A)

この2つのうちどちらかを選択できるようにするというのはどうでしょうか。もっと細かく考えていくと、

【チャレンジコース】

選択条件:サポートコースでの出勤率が90%以上(有給休暇など除く)、業務ペースや精度が安定している、本人に明確な目標がある

待遇:給与アップがある、一定の成果を出せば正社員登用のチャンスがある

その他:本人の希望、もしくは上司の意向によりサポートコースに戻ることも可。

【サポートコース】

障害者雇用として入社した場合、まずは全員このコースから始まる。療養休暇などで休養中の場合、このコースになる。

給与アップの可能性は低いが、業務内容の一定化や周囲のサポートなども多く得られる。ジョブコーチがいる場合、このコースの社員に重点的にサポートをする。

このような形ではっきりとコースを分けることで、サポートをする、受ける側どちらも分かりやすくなるのではと考えています。

また、僕もそうでしたが『いつ正社員になれるのかな…』という不安を持つときもありました。そんなときも「チャレンジで頑張れば正社員になれる」と目標設定ができるので、やりがいにつながりやすいのではないでしょうか。

【提案2】目標A、目標B専門の雇用を行う

これは企業単位になるので、僕の立場ではおこがましいかもしれません。ただ、当事者として『あったら魅力的だな』と思えるのが、この『提案2』です。

障害者雇用として入社しても、こんなふうに異なった目的が飛び交っていたら、当事者の社員は振り回されてしまいます。それが原因で体調を崩してしまうことにもなりかねません。

ですから、予めこのうちの『どちらかの目的でしか雇用をしない』と決めて募集をするというものです。もちろん雇用率などの関係もあるので『選ぶ余裕なんてない』という企業もあるかもしれません。

しかし『サポートを受けて働きたい』という方が、就労継続支援事業所などのほかに一般企業でも安心して働けるような『選択肢』があってもいいと思うんです。継続支援のワンステップあとの形でもいい。

さらに、『カスタマイズ就業』のような障害者の強みを最大限に活かす働き方が出てきているように、障害者雇用での実務経験を積んでステップアップしたい人用などのチャンスもあっていいと思います。

これを求人票などで

『障害者雇用(サポートコース)』

『障害者雇用(チャレンジコース)』

のように表記して、応募前から先の働き方が見えるような形式にすると、障害を持つ方の『働くこと』へのプレッシャーが緩和されるのではないでしょうか。


おわりに

今回は、『フリーライター』だからこそ言える、『自分の意見・思い』をお話ししてきました。

正直、目標AとBを同時に考えることは、難しいと思います。なぜなら特に発達障害は得手不得手のムラが激しいことが多いです。そのため『苦手』か『得意』のどちらかに労力を向ける方法を取らないと、どっちつかずになってしまうおそれを感じるからです。

こういった曖昧な状態がストレスになり、体調を崩してしまうかもしれません。

ですからこの提案は『社員経験しかしていない、いち障害者の夢物語』かもしれません。それでも今日こうして声にしたのは、同じ当事者たちが少しでも心地良く働けるようになってほしいからです。

この提案、もしくはこれ以上のスタイルが出てきてくれることを願います。もしかしたら僕が知らないだけで既に動き始めている。一番うれしいです。
とにかく僕も目標に向けて、やれることをやり切ります。

他にも『こんな働き方があればいいのに…』と思う方、TwitterアカウントまでDMください。お待ちしています(^^)



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