【記憶力向上のコツ】ASDの僕が持つ『記憶特性』の種明かしをします

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ASDの障害特性として、記憶力が良い傾向がある

こんにちは。
フリーライターの林谷です。

今回は、僕自身が当事者である発達障害のひとつ、ASD(自閉症スペクトラム)。この障害特性として多く見られる『記憶力の高さ』について紹介していきます(僕が持つ発達障害についてはこちらの記事をご覧ください)。

ASD当事者に多い「記憶特性」を持っている

なかなか覚えられなくて困っている…という方には、羨ましい特性かもしれません。もちろん、同じASDでも個人差がありますので、誰しもが記憶力が高いとは言い切れません。

しかし、持っている特性の傾向としてASDには記憶力の良さ、これが伴うことが多いです。僕自身、勉強が得意だったとは言えません。でも、記憶力には自信があります。

小学校3年生の時の○×ゲームの問題文。もう今から31年経ちますけど、まだ覚えています。

問題は
子どもの歯が28本、大人の歯が32本、ブタの歯が44本、○か×か?
でした。

どうして覚えているのか?今日はその仕組みについて解説します。

ASDの当事者である・ないに限らず、モノを覚えることが苦手な方にASDの記憶の仕組みを伝えることで、ヒントになる場合もあるのでは?そう感じてお伝えすることに決めました。

では、その仕組みについて紹介していきましょう。

参考:自閉スペクトラム障害 | 仙台の心療内科・精神科・美容内科マドレクリニック


【体験談】ASD当事者の僕が持つ『記憶力』の仕組み

①執着やこだわりの強さの影響で、一つ一つの物事への思いも強い

もともとASDを持つ方に記憶力が良い傾向があるのは、この「執着・こだわりの強さ」が大きく関わっている僕はそう思います。

上の○×ゲーム。これは僕が全校生徒のうち僕だけ正解したこと、ということで覚えているんです。そういう印象深いことって、どんな人でも覚えやすいと思いますよね。

例えば好きな人に振られたときの言葉や、
ものすごく怒られたときの先生の表情とか、
または大会に優勝してすごい嬉しかったりとか、
何年経っても覚えていること、ありませんか?

これって、「辛い」「悔しい」『嬉しい』という感情が加わることで、物事に『執着できている』からです。『林谷君を好きでも、何も変わらないから』これは高2の時に好きだった人に言われた言葉です。厳密には、端から聞こえてしまった言葉ですが。

まあ余談でしたけど、こうした執着の強さから起こる「記憶」の機会が、ASD当事者の僕にはすごく多いんです。

ASDの当事者の中には、本当に興味がないことを除いて、特定の物事へハンパない集中力を発揮することがあります。この時には当然、その対象への『強い思い』があります。その熱量をベースとして生活していることで、全体的にも「記憶力が良い」ような形になるのでは、そう考えています。

ですから普段の記憶力を高めたい。そんな方は『ただ情報を受けるのみ、調べるのみこれを止めてみましょう。

そしてひとつひとつの物事への執着を高めてみること、中でも特に、感情を加えてみるよう工夫してみましょう。「嬉しい」「辛い」「悔しい」「ムカつく」なんでも構いません。より多くの感情が沸いたものほど、強く残ります。覚えるのではなく、思い出になるように体感するようにしてみてください。こうすることで、記憶力向上に繋がるかもしれません。

参考:自閉スペクトラム症(ASD) | 北戸田駅前まつもとクリニック

②定型パターンやルーティーンにこだわりやすい

ASDを持っていると、『環境変化』が苦手なことが多いです。これは①でお話しした、『執着』から脱却することにもなるので苦手、ということも原因のひとつです。

また、0から何かをするという『曖昧なもの』に向けて取組む際には、他の方の数十倍エネルギーを使います。もしくは、拒否反応を示すほど不安になることもあります。

これは『はっきりとしない、曖昧なものに対しての処理が苦手』という一面からです。暗黙の了解や、ルールなど明文化されていない決まりを知るのに、僕も良く苦労するものです。

ですから突然「今日から方針を変えます」と言われたら、大パニックになります。突然ではなく、変更が予定されている場合でも、事前に過剰にも見えるほど準備します。

見えないことへの不安が強いので、事実以上に変化そのものを、大きな問題として捉えようとします。万全以上の準備をしないと、安心できないためです。僕も妻に「そこまであるわけないでしょ」と言われます。それでも、不安なので過剰に準備することを止められないのです。

…で、ここで何が言いたいのかというと、変化に弱いのは、常に同じ行動をしていることが多いこともあります。パターンやルーティーンを作り、常にテンプレに沿って行うことで安心しやすいです。執着できますから。

例えば転職して新しい環境に行ったとき、朝は何する、昼は何時に何する…のように一日の生活パターンを決める、といった感じです。どんな環境や物事でも、この「パターン」を探すことで一連の流れを記憶することが比較的スムーズに行えています。こうして傾向やパターンを見つけ、覚えていく中で記憶しやすいのかなという感覚も持っています。

ですからもし覚えることに苦労していたら、覚えたい対象の「傾向」「パターン」を探してみることで覚えやすくなるかもしれません。テストや受験の時、過去問題を見る。それを他のことにも置き換える、ということになります。
参考:こだわり、不安がつよい:困りごとのトリセツ(取扱説明書)|発達障害プロジェクト
参考:カウンセラーが知っておきたい知識「大人の発達障害」とは? | リカレント
 

③自問自答が多い

これはASD当事者のうち、多くの方が該当するかどうかは分かりません。しかしASDの特性上、コミュニケーションや人の関わりで、どうしてもうまくいかないことが起きやすいです。

僕も小学校・中学校の頃は普通に接しているつもりでも、周囲から「ムカつく」「キモい」とよく言われていました。そんな傷つくくらいなら、他者と対話することに何のメリットもない。それくらい思っていました。

その結果『面倒な会話をするくらいなら、自分の中で完結させよう。自分自身で理解できるようにしておこうこう考え一人でいることが多かったのです。

これはもちろん、他者との関わりを拒絶するように…というアドバイスではありません。
ここでお伝えしたいことのは、一人でいる時間が長いことで”自分同士”で会話する機会が多かった』こと。これです。

僕は常に

(僕A)『明日どうしようかな…』

(僕B)『雨だし、やりたくないよね』

(僕A)『でも、明日やらないと、もっときついよね』

(僕B)『だけどな…来週の月曜まで様子見てみるか』

なんていう対話を、頭の中で一人、よくやっていました。

常時自問自答、そんな時期もありました。2人分の会話を1人で行うことによって、自分の中の情報のやり取りが活発になっていったのを覚えています。こうしてブログなどでアウトプットができているのも、この自問自答が多かったことも関係しているのです。

今では他者とも対話する楽しさや大切さを学んで、自問自答だけではない会話もするようになりました。それでも自分との会話は、今でも継続中です。

この会話が、一つ一つへの思いや執着を強めます。頭の中で交わされる言葉や情報量が増えます。そうすることで、より記憶力が高まる感覚があるのです。僕にとっては記憶力だけでなく、発想力にもつながっています。

ですから普段あまり自問自答をしないな…何かあったらすぐに人と電話しちゃう、LINEしちゃう…という方は内容はなんでもいいです。普段友だちと話していることでもいいです。

1人2役の自問自答をすることで、意識を活性化させる方法を試してみる

これを試してみてください。

補足として、話す内容によっては全く真逆の内容で議論させてみても良いでしょう。
例えば僕のブログで言うと、『これは発達障害をテーマにしよう』と思う人だけでなく、『いやいや、これはライティングの方が近いんじゃないかな』という人も加える感じです。こうすると一つの事象にこだわらず、客観的に考えられるきっかけにもなります。

ASDの記憶特性は、辛い点・デメリットもある

ここまでASDの当事者が持ちやすい、「記憶特性」についてお話ししました。良い点ばかりをお伝えしてきましたが、そうでない点もあります。記憶力を高めたいという方は、ぜひこのデメリットも踏まえたうえで覚えていってほしいです。

いつまでも嫌な経験を忘れられない

記憶は、良い記憶もありますが、そうでない記憶もあります。もう忘れたい、二度と思い出したくないものでもなかなか忘れることができません。

周囲の友達や知人から『いい加減昔のことなんだから忘れろ』そう言われても、へばりつくように思い続けるのです。

これはASDの『答えや内容が明確になるまで不安がある』ことが大きく関わっているのではと考えています。僕の場合、特に他者の心情について悩むことが多いです。

『あの人はどうしてあんなことを言ったんだろう』

『どうして僕を嫌うのだろう?』

というように、他者の心理についていつまでも執着してしまいます。

ほとんどのケースで、他者の心情には答えが見つからないか、そもそも答え自体ないことの方が多いです。だいたいが『なんかムカついたから』とかですから。そうと頭では知っていても、『曖昧なもの』がいつまでも残っていると

取り除きたい

きれいにしたい

とにかく納得したい

明確な理由付けをしたい

こう思い続けるために、いつまでも忘れられずに苦しみやすいです。

ですから覚えるために執着を強めたい場合は、このデメリットも踏まえたうえで、「勉強」「仕事」「試験の項目」など自分の覚えたい対象を決めて行うことをお勧めします。

参考:アスペルガー症候群 | 病気スコープ

おわりに

よく発達障害の記事に関しては、

・苦手なものから逃げる
・苦手なことを克服する
・ただ、特徴を挙げている


こんな記事を目にします。時折、良い部分が少し紹介されている記事もありますが、実例や
具体的な場面に応じた活かし方の記事はまだ、少ないという印象です。そんな背景もあって今回は自身の体験から「記憶力」という特徴について、お話ししてみました。

当事者以外の方にも良い部分はどんな方からでも吸収していってほしい。そんな気持ちで「記憶力の仕組み」について紹介しました。

覚えられない。すぐに忘れてしまう。そう思ったら

①物事への執着を強めてみる

②対象のパターン、傾向を分析してみる

③自問自答の機会を作る


ぜひ、どれか一つでもいいのでトライしてみてはいかがでしょうか。

【セットで読むと良いかも】


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